東日本大震災の後に読んでみた本。
報道ではあまり取りざたされていなかったように思うが、あの地域は明治二十九年、昭和八年とかなり大規模な地震に遭っていたらしい。
また、昭和三十五年チリのチリ地震でも津波が届いていたとのこと。
本書は、それらの地震について、手記やインタビューなどの資料をまとめる形で構成されている。
生き生きしたインタビュー内容に、災害に関わらず歴史的な出来事に関しては、関係者が存命のうちに話を聞くことの重要性を感じる。
私はウインタースポーツ好きが高じて、東北には冬・夏ともに良く行った。
とはいえ住んだことがないので詳しくは分からないのだが、そこで生活している人はきっと、日常的に津波警報に慣れてしまっていたり、堤防を信頼していた、などの理由で逃げるのが遅れた人も居るのだろう。
また、印象深かったのは、そのころの東北の地域は「陸の孤島」で、整備された交通網があまりなく、被害の全容を把握するにも、救援物資を送るにも難儀した、という記述。
その分、そこに住む人々が自然が豊かで奇岩のリアス式海岸の神秘さや海産物の豊かさなどを愛している様も読み取れた。
私は「危険なのになぜ移住しないのか」という疑問を持っている派だったのだが、これを読んで、東北の人の中央に対する意識の持ち方だったり、地元への愛着だったり、非常に我慢強い気質だったりの一端が垣間見えた気がした。
とはいえ、堤防では防げない被害が出るということが実証されてしまった以上、都市計画での減災が計画されることだろう。
その際はどうか、地域の人の精神に沿った町づくりがなされることを願うばかりだ。